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東京高等裁判所 平成4年(ネ)1289号 判決 1992年11月26日

控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

青森定期自動車株式会社

右代表者代表取締役

齋藤照二

控訴人・附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)

甲野一郎

日産火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

川手生巳也

右三名訴訟代理人弁護士

藤崎生夫

被控訴人・附帯控訴人(以下「控訴人」という。)

乙川春子

乙川夏子

乙川二郎

右法定代理人親権者母

乙川春子

右三名訴訟代理人弁護士

樋渡源藏

樋渡俊一

主文

原判決を次のとおり変更する。

控訴人青森定期自動車株式会社及び同甲野一郎は、連帯して、被控訴人乙川春子に対し金五四九万〇七八七円、同乙川夏子及び同乙川二郎に対し各金二七四万五三九三円並びにこれらに対する平成元年七月五日から右各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

控訴人日産火災海上保険株式会社は、同青森定期自動車株式会社に対するこの判決が確定したときは、被控訴人乙川春子に対し金五四九万〇七八七円、同乙川夏子及び同乙川二郎に対し各金二七四万五三九三円並びにこれらに対する平成元年七月五日から右各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

被控訴人らの本件附帯控訴をいずれも棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じてこれを六分し、その一を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。

この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。

事実

(申立て)

一  平成四年(ネ)第一二八九号事件

1  控訴人ら

(一) 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。

(二) 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

(三) 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人ら

本件控訴をいずれも棄却する。

二  平成四年(ネ)第三一六五号事件

1  被控訴人ら

(一) 原判決を次のとおり変更する。

(二) 控訴人青森定期自動車株式会社及び同甲野一郎は、連帯して、被控訴人乙川春子に対し金一三九一万四一七三円、同乙川夏子及び同乙川二郎に対し各金六九五万七〇八六円並びにこれらに対する平成元年七月五日から右各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(三) 控訴人日産火災海上保険株式会社は、同青森定期自動車株式会社に対するこの判決が確定したときは、被控訴人乙川春子に対し金一三九一万四一七三円、同乙川夏子及び同乙川二郎に対し各金六九五万七〇八六円並びにこれらに対する平成元年七月五日から右各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(四) 訴訟費用は第一、二番とも控訴人らの負担とする。

(五) 第二項につき、仮執行の宣言

(被控訴人らは、いずれも当審において右(二)及び(三)のとおり請求を減縮した。)

2  控訴人ら

(一) 本件附帯控訴をいずれも棄却する。

(二) 附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。

(主張)

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決四枚目裏二行目の「を発生させた」を「が発生した」と改め、同一〇行目の「過失により、」の次に「カーブを曲りきれずにセンターラインを越えて加害車を対向車線に進入させて」を加え、同五枚目四行目の「確定」を削り、同裏四行目の「本件」の次に「交通」を加え、同一〇行目の「一九八八年」を「昭和六三年」と、同末行の「WAIS」を「ウェクスラー成人知能尺度(以下「WAIS」という。)による」と、同六枚目表七行目の「金営坂」を「釜谷坂」と、同行の「釜屋坂」と改め、同行の「おいて、」の次に「海中で」を加え、同九行目から同八枚目裏一〇行目までを次のとおり改める。

「4 損害

(一)  治療費

三七三万〇七七八円

(二)  入院付添費

五万六〇〇〇円

(三)  入院雑費

九万二四〇〇円

(四)  文書料

二万七一八〇円

(五)  通院交通費

八万八一六〇円

(六)  休業損害

二二七万六〇三八円

(七)  後遺障害による逸失利益

一四三四万三七二三円

要一が被った本件後遺障害は、精神、知能の障害は自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表の第七級四号に、肩関節運動制限は同表の第一二級六号に該当し、併合して同表の第六級に相当し、要一は、右後遺障害によりその労働能力の六七パーセントを喪失したものであり、要一の昭和六二年における実収入金額は年額二〇八万五七五〇円、要一の症状固定時の年齢四四歳から就労可能年齢である六七歳までの就労可能年数二三年間、生活費の控除率を一二パーセントとして、ライプニッツ方式により年五分の割合による中間利息を控除して算出した逸失利益は一四三四万三七二三円(208万5750円×0.67×(1−0.67×0.3)×(13.7986−0.9523))となる。

なお、本件死亡事故は、酒気を帯びた状態で水温摂氏二〇度の海中に入るという正常な判断力を有している者であれば到底考えられない行動の結果生じたものであり、要一が右の行動をした原因は、本件傷害及び後遺障害により一種の神経衰弱状態ないしアルコール依存症に陥っていたことにあるから、要一の死亡と本件交通事故との間には相当因果関係がないとしても、単なる条件関係以上の密接な関係があったから、要一の死亡後についても本件後遺障害による逸失利益が認められるべきである。

(八)  後遺障害慰謝料

一二〇〇万円

要一は、本件交通事故により重傷を負い、延べ七七日間の入院及び一年三か月間の通院生活を余儀なくされた上、本件後遺障害により大きな精神的苦痛を受けたものであり、これを慰謝するに必要な額は一二〇〇万円を下らない。

(九)  弁護士費用

二五二万九八四九円」

2  原判決九枚目表末行の「(一)」を削り、同裏一行目の「の内金」から同六行目の「求める」までを「である被控訴人春子につき一三九一万四一七三円、同夏子及び同二郎につき各六九五万七〇八六円並びに要一の死亡した日の翌日である平成元年七月五日から右各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める」と改める。

3  原判決一〇枚目表二行目の「要一」から同三行目まで、同四行目の「(1)」を削り、同行の「後遺障害」から同五行目までを行を改めて、次のとおり改める。

「本件交通事故とは相当因果関係のない本件死亡事故により要一の死亡という事実が発生している以上、本件後遺障害による逸失利益は同人の死亡時以降については認められないというべきである。

仮に右逸失利益が同人の死亡時以降についても認められるとしても、要一は、自らの自由な意思に基づく危険な行為により死亡したのであるから、公平の観点から過失相殺を行うべきである。

生活費は、将来の収入を得るために必要な費用であり、右逸失利益の算定に当たっては収入の三割を生活費として控除すべきである。

また、要一は、昭和五七年ごろ、東京において稼働中、金属バットで頭部を殴打され、頭蓋骨骨折の重傷を負い、約一か月半にわたり入院したことがあり、本件受傷当時も、右殴打による病変は左前頭部、側頭部の広範囲にわたり硬膜下血腫として残っていたから、要一の労働能力喪失率の認定については右既存後遺症分として五パーセントを控除すべきである。」

(証拠関係)<省略>

理由

一当裁判所の判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由の説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一〇枚目表末行の「甲第四号証」の前に「原本の存在及び成立に争いのない」を加え、同裏二行目の「甲第二五」を「成立に争いのない甲第二四」と、同一〇行目の「甲第四」から同一一枚目表一行目の「第五九号証」までを「前掲甲第四号証、甲第五号証、成立に争いのない甲第六ないし第一〇号証、甲第一三号証、甲第一四号証、甲第二〇号証、甲第五六ないし第五九号証、甲第六二号証の一、原本の存在及び成立に争いのない甲第一二号証、甲第一六号証、甲第一七号証、甲第一九号証、郵便官署作成部分の成立については争いがなく、その余の部分は弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第六二号証の二」と改める。

2  原判決一一枚目表四行目から同五行目にかけての「に出生した後、本人の意思で高校を中退して」を「出生し、高校を中退した後、」と、同行から同六行目にかけての「見合結婚をして」を「婚姻し」と、同八行目の「キヨ」を「清次」と、同行の「家族で暮らして来ており」を「が同居し」と、同裏一行目及び同二行目を「要一は、被控訴人春子と婚姻後は約二年間東京へ働きに出たことがあったほか、山形県内で右仮枠大工として就業しており、」と、同三行目の「七月」を「四月」と、同四行目の「阿部工務店」を「有限会社阿部工務店(以下「阿部工務店」という。)」と改め、同九行目の「行き」の次に「潜水して」を加える。

3  原判決一二枚目表六行目の「本件」の次に「交通」を加え、同九行目の「二六日」を「二八日」と改め、同裏一行目の「Ⅲ」の次に「-1」を加え、同二行目の「三週間後の同月」を「同年一月」と改め、同行から同三行目にかけての「改善し、見当識障害も」を「改善した。しかし、見当識障害があり」と、同四行目の「同年二月に入った」を「同月三〇日」と、同六行目の「同月」を「同年二月」と改め、同八行目の「一月」の前に「同年」を加え、同九行目の「昭和六三年」を「同年」と改め、同一三枚目表一行目の「前示のとおり」を削り、同三行目の「顕著」を「著明」と、同一〇行目から同末行にかけての「平成二年」を「平成元年」と、同裏一行目の「状況」を「状態」と、同二行目の「可能性は」を「恐れが」と、同末行の「なったが」を「なった。しかし」と改め、同一四枚目裏一行目の「周囲炎」の次に「のために」を加え、同二行目の「及び後遺障害の残る可能性は」を「について」と、同六行目から同七行目の「立っており」までを「右(2)のとおり、本件交通事故から一か月ほどは精神、意識障害が強く目立っていたこともあり、特段の症状を訴えていなかったが」と、同八行目の「同月一八日には」を「荘内病院眼科で検査を受けた結果、坂井医師は、同月一八日」と、同九行目の「受けた」を「した」と、同一五枚目表六行目の「途中からは」を「昭和六三年四月一三日以降は」と改め、同七行目の括弧書きを削り、同九行目の「経営者である証人」を「代表者」と改め、同一〇行目の「三日間」の前に「平成元年五月一六日ころ」を加え、同末行の「(この時期についてもはっきりしない。)他は」を「ほかは」と改め、同裏一行目の「毎日のように」の次に「本件死亡事故現場付近の」を、同三行目の「黒木医師は」の次に「昭和六三年八月二九日、」を、同行の「注意」の次に「集中」を加え、同四行目の「難しい」の次の「もの」を削り、同六行目の「野々村医師は」の次に「同年九月八日、」を、同七行目の「渡部医師は」の次に「同年八月二九日、」を、同九行目から同一〇行目にかけての「八木医師は」の次に「平成元年二月一〇日、」を、同行の「長谷川医師は」の次に「同年一月二七日、」を、同一六枚目表一行目の「本件」の次に「交通」を加え、同裏三行目の「二六日」を「二八日」と改め、同五行目の「毎日のように」の次に「本件死亡事故現場付近の」を、同一七枚目表二行目の「なお、」の次に「前掲」を加え、同五行目の「上も」を「による検査の結果でも」と、同七行目の「治癒した」を「治癒していた」と改め、同末行の「したがって」から同裏二行目<編注・本誌七九九号二三〇頁四段三九〜四三行目>の「ところである。」までを削り、同六行目<同二三一頁一段八行目>の「本件死亡事故を招いた貝採り自体」を「本件死亡事故当時、前夜に飲んだ焼酎の水割り約三合の酒気が残存していたとは考えられず、当時酒気を帯びていたかのような<書証番号略>の記載はその根拠が明らかでなく、たやすく採用できないし、他に要一が当時酒気を帯びていたことを認めるに足りる証拠は存しない。また、貝採りにしても、ウェットスーツ等を装着して行ったものであるから、<書証番号略>及び原審における被控訴人春子本人尋問の結果を考慮しても、それ自体」と、同七行目の「他に」から同一八枚目表三行目まで<同二三一頁一段一一〜二三行目>を「要一が貝採り中に心臓麻痺を起こすに至った機序そのものは明らかではないものの、右心臓麻痺は海中での貝採り行為自体の危険性に起因して発生したものと推認され、たまたま右行為が平日の日中に行われたこととは関係がないと認められるから、本件交通事故がなければ本件死亡事故は生じなかったという条件関係があるとはいえないところであり、したがって、本件交通事故と本件死亡事故との間に因果関係があるとは認められない。」と改める。

4  原判決一八枚目表四行目の「(二)」及び同行の「・予備的請求」を削り、同末行の「認められるところ、」を「認められるが、前掲」と、同裏一行目の「によって認められるところの」を「によれば」と、同五行目から同六行目にかけての「等の事実に鑑みれば」を「が認められるから」と改め、同末行の「甲第五七号証」の前に「前掲」を加え、同一九枚目表三行目から同九行目までを削り、同一〇行目の「5」を「4」と、同末行の「甲第一八号証の一ないし七及び甲第六一号証(いずれも領収書)」を「成立に争いのない甲第一八号証の一ないし七、甲第六一号証」と、同裏五行目の「単価」を「作成費用」と、同七行目の「6」を「5」と改め、同八行目の「甲第一五号証」の前に「原本の存在及び成立に争いのない」を加え、同二〇枚目表一行目の「7」を「6」と、同六行目の「二六日」を「二八日」と改め、同裏一行目から同二二枚目表末行まで<同二三一頁四段二二行目〜二三二頁三段一〇行目>を次のとおり改める。

「7 後遺障害による逸失利益

金二万六八〇〇円

前記のとおり昭和六二年における要一の実収入額は年額二〇八万五七五〇円であり、前記入通院期間中に見られた要一の症状及び本件後遺障害の程度に照らすと、要一の本件後遺障害は全体として自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表の第六級に相当し、これによる労働能力喪失率は六七パ−セントと認めるのが相当であり、これにより本件後遺障害が固定した平成元年六月二八日から同年七月四日までの本件後遺障害による要一の逸失利益は金二万六八〇〇円(208万5750円×0.67÷365×7)と算定される。

被控訴人らは、要一の死亡後についても本件後遺障害による逸失利益が認められるべきである旨主張する。しかし、要一の死亡と本件交通事故との間に因果関係が認められないことは前記のとおりである。そして、後遺障害による逸失利益の算出に当たって、一般に平均的な稼働可能期間を前提として将来の得べかりし収入を算定しているのは、事の性質上将来における被害者の稼働期間を確定することは不可能であるため擬制を行っているものであるから、本件のように事実審の口頭弁論が終結するまでに、本件交通事故と因果関係の存しない本件死亡事故による要一の死亡という事実が発生し、要一の生存期間が確定して、その後においては逸失利益の生ずる余地のないことが判明した場合には、右事実は要一の本件後遺障害による逸失利益の算定に当たり斟酌せざるを得ないというべきであり、それがむしろ現実に発生した損害についてその公平な分担を図ることを理念とする不法行為による損害賠償制度の趣旨に沿うものというべきである。したがって、被控訴人らの右主張は採用することができない。」

5  原判決二二枚目裏一行目の「9」を「8」と、同行の「金八五〇万円」を「金一一〇〇万円」と、同四行目の「事実」を「事情」と、同七行目の「10」を「9」と、同行の「二四二〇万二一〇三円」を「一七二九万七三五六円」と、同一〇行目の「一六八八万六三二一円」を「九九八万一五七四円」と改め、同二三枚目表一行目の「甲第一九号証」の前に「前掲」を加え、同二行目から同三行目にかけての「八四四万三一六〇円」を「四九九万〇七八七円」と、同三行目の「四二二万一五八〇円」を「二四九万五三九三円」と、同八行目の「八五万円」を「五〇万円」と、同行の「四二万円」を「二五万円」と改める。

二以上の次第により、被控訴人らの控訴人らに対する本訴請求は、控訴人青森定期及び同甲野一郎に対し連帯して、本件交通事故による損害賠償として、被控訴人春子につき金五四九万〇七八七円、同夏子及び同二郎につき各金二七四万五三九三円並びにこれらに対する本件交通事故が発生した後である平成元年七月五日から右各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求め、控訴人日産火災に対し同青森定期に対する本判決が確定することを条件として、右同額の金員の支払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由がなく、控訴人らの本件控訴は右の限度で理由があるから、原判決を主文のとおり変更し、また被控訴人らの本件附帯控訴は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官菊池信男 裁判官吉崎直彌 裁判官奥田隆文は、転補のため、署名押印できない。裁判長裁判官菊池信男)

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